86話:熱き男エンディアの涙!未熟者と呼ばれた過去への入り口!!(後編)
文字数 4,455文字
エバスの豪邸にて――。
チーム「カインドフォース」のリーダーを務めている
エンディアはずっと当主に狙いを定めていた執事で在り続けたローウェンの企みを知り、
その算段でヴィーバの拉致監禁、そしてこの家に眠るロックダスターの奪取を阻止しようとするけれど
コックブロットを投げ付けられてしまった事で、
昔の思い出がフラッシュバックしてしまい、熱き男は完全敗退してしまい気絶……。
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自分の過去を振り返っているエンディアの夢の中――。
子供時代の彼は今とは口調も体格も違う。
虫捕りを日課としていた位、趣味の1つとして挙げていて
父親であるアルヴァにも構う事なく没頭していた。
ただ、これから彼の身にとある危機が迫ろうとしているなんて
喧嘩して家を飛び出したエンディアにはまだ気付きもしなかった……
虫捕り網、篭を持ちながらそのままアルヴァの目の前から
逃げ出して行った息子を見ている。
その行為は考え方によって良い意味でも、悪い意味でも捉えられてしまう……
父親と交わした約束が悪い方向に進んでしまい、
息子であるエンディアは家を飛び出したに違いない。
″未熟者″ 。そう言い放った事にちゃんと訳がある……
そんな時、玄関先でエンディアの事を思っていると、母であるアイリスが散歩から帰って来た。
アイリスが常に自分に言い聞かせている事。
エンディアと喧嘩をしたなら、ちゃんと向き合う事で
もっと家族円満を向上させたいと常日頃願っている。
まずは息子に何で未熟者と言ったのか、ちゃんと向き合って話をする。
アルヴァ自身に言い聞かせながら、息子の元へ向かい始める……
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時間は経ち、ここは良く虫捕りをするエジェテールの郊外にある森林地帯――。
網を手に持ち、ボーッ と佇んでさっきの父親との会話を思い出していた。
不意に木にぶら下がっている虫の住処っぽい所を見つけ、逃げられないように忍び足で近付く……。
ただ、これがエンディアが虫嫌いになった理由。
彼が見つけたのは鋭い針を持ち、
無闇に人を襲う殺人蜂「ビージャック」。
特徴として夏の期間、群れを成しながら移動する習性がある。
住処を荒らされると思い、ビージャックの群れは
必要以上にエンディアの身体や顔目掛けて攻撃していく……
エンディアが地面に倒れ込んでも必要以上に攻撃して、彼のあらゆる場所が腫れ上がって
見るに堪えない姿になってしまう。
アルヴァが自分が身に着けていた服で排除しつつ、倒れているエンディアの元へ駆け付ける。
家族の事が誰よりも好きだった息子エンディアは
心の何処かでは謝りたい気持ちがあったに違いない……
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ここは帰路に着く途中――。
森林地帯の近くにある家に向かいながら、父に抱っこされた状態で2人で何か話をしている様子。
よくぞ、言ってくれた。ただ一つ言わせてくれ……!
絶対に強さを求めるな。強い奴ほど何処かに綻びが出来る。
″強さ″ と言うのは守る程偉大なモノになる。力任せじゃダメなんだ。
父親と口喧嘩をして飛び出し、ビージャックの大群に襲われたのも束の間……
すっかり仲直りをして、背後から夕陽の光に照らし出された
エンディアとアルヴァ2人のシルエットが歩道に映し出され
その影は笑っているように見える。
そして、向こうには手を振って息子と父親の帰りを待っていたアイリス。
ご飯の良い匂いに誘われ、2人は「ただいまー!」と大きな声を張り詰めて帰宅。
今日も1日平和……かと思いきや、
この数カ月後、この町に戦慄が走るなんて誰も思わなかっただろう。
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ほんの数日前まで、のほほんとした
田舎町だった小町「エジェテール」は
とある1人の青年によって半壊させられ、
そして住民も殲滅してしまい、もう既に何もかも形を成していなかった。
ヤバそうな目をしていて、かなり上から目線の攻撃的な男性である彼が
これらを仕出かした張本人――。
町から少し離れた場所に位置しているエンディア宅に目を付けられてしまい、
コツコツと足音を立てて、冷ややかにあざけ笑いながら何1つ表情変えずに家前に立つ。
彼からしたら中に誰が居るのか分からない為、あくまで
中に入らず外に誰かしらが出てくるのを待ち続ける……
そして、その時が来た。
玄関の扉をガラガラッ と開けると
そこにはアルヴァからしたら見ず知らずの男性が
家の門前でヤバそうな目付きでこっちを見ているのにいち早く気付き
アイリスとエンディアを守ろうと背中を向けた瞬間……
彼の第六感が働き、門前に立っていたこの男性が
エジェテールを壊滅に導き、住民を1人残らず殲滅して行った犯人とビビッ と気付くけれど
血も涙もない悪魔のような存在から家族を守る為、スキル「断割」の攻撃により
一刺しでトドメを刺されてしまい、そのまま他界してしまう。
玄関で大量の血を流して亡くなっているアルヴァの元に
急ぎ足で駆け付けるエンディア。その目からは滅多に流す事が無かった涙が……
最後まで息子であるエンディアを守り、笑顔で
オルームの手によって亡くなってしまい、他界してしまう。
彼は何とかその隙を付いて逃げ出す事に成功……、しかしながらそれ以降
身寄りがなくなってしまったけれど、そこから先の真実はまだ語られる事のない話……。
虫嫌いになったキッカケから、当時両親が何者かに殺されるまでの
記憶を振り返ってみると良い記憶もあれば、悪い記憶もある。
ただ、エンディアの家族は
幸せな家庭環境を築き上げていた為、
彼の人生は真っ暗ではなく光に包まれていた。
もしかしたら、これが本当の"家庭の在り方" かもしれない……。