52話:収容施設脱出開始!ルドスとリリカルラビット!!
文字数 4,535文字
第1部のあらすじ
幹部「マイティーダーク」を束ねるボス『エディール』の手により更に傘下を増し、大きな存在に…。
その中、姿をずっと晦ましていたリリカルラビットの研究第一人者であるリオルドが発見される。
デュードビレッジ、シャランアゾール、クロスピア…。様々な場所を巡り、
色んな登場人物との過去を遡ったり、邂逅を経たりしながら
いよいよ敵対している皇帝やエディール達を相手にする為
悪の根城であるヒルハイドタワーへと向かい始めようとしていた…
****
ここはヒルハイドタワー、地下収容施設――。
リリカルラビット4匹(アルム/ユウマ/アル/ユメ)、ライト達、そして先日
裏切り発言によりエディールに逆らったブルが捕らえられている。
【アル】
もうイヤですー、こんな場所…。
早く誰か出して下さい…。
【アルム】
ティムさん、ティアラさん…。元気にしてるのかな…
久し振りに会いたいです…。
【ユウマ】
ほんまや! こんな退屈な場所…嫌いで!!
閉じ込めるなんてどんな神経してはるんだ!?
【ユメ】
確かにそうですよね…
私のスキルでしたら確実に出られますけど…
あ、あれ? 言いませんでしたっけ… 私のスキルは透明化です。
これでルドスさんを助けた事あるんですよっ…! 元気にしてるかな?
じっと見つめないで下さいよー。
な、何ですか…? こ、怖いです…
そんな大事な事もっと早く言って欲しかったで!
そうか…、ユメのスキルは透明だったか。そういうスキル羨ましいなあ…
その時、ユウマの瞳から涙が溢れている事にアルムが気付き
心配そうに聞き始める。リリカルラビット同士だからこそ話し合える事もある…
ユウマさん…、目から涙が出ていますよ。
皆と会えなくて辛かったんですよね…
泣いてなんかおらへんぞ…、これは汗だ…。
こっち見ないでくれ。お前達にこういったモノは見せたくないんや…
悔しいなあ。ずっと泣かないと決めていたのに…やっぱ無理だったわ。堪忍な!
思い返せば、デュードビレッジでグレイザーとディゼールに襲撃された時に捕らえられたユウマ。
リリカルラビット4匹の中で一番最初に離脱させられ、ずっとヒルハイドタワーの地下収容施設に
閉じ込められていた…。あれから何日経ったのか、皆と会えない程この部屋で過ごした。
皆、元気にしているかな?
早く助けに来てくれないかな?
時間という物は残酷だ。
遅くなればなるほど、不安を募らせていく。
ユウマは強がり言うタイプだけれど、心の中では皆と過ごした思い出が走馬灯のように広がり
やっと出会えたこの瞬間に、思わず泣いてしまう…
木漏れ日の森で起きた事は怖かったですし、信じられない光景を目にしました…
けれどもティムさんから貰ったクッキーの味、今でも忘れません…。
また食べたいです…!
わいはミントとオルガっちゅう子に出会えた…!
一悶着は遭ったけど、それも楽しい思い出や。
彼には辛い出来事もあったけど、最後まで見届けたいんや!!
私だって、最初はずっと誰にも会えなくてずっと不安でしたよ…
初めて旋律の館の外観を見た時、不気味だと思った…
けれども、最終的には見方が変わって凄く良い場所でしたよー!
しかしディゼールさんと言う人怖かったです…。それに一番はナギさんです…
えっ!? そうなんか…
けれど、ナギも皆の事を思って苦渋の判断をしたんじゃないのか…
なるほどなあ。そこの所アルはどうなんだ?
ナギさん、凄く素敵な人でした…。
途中雨が降って来て、ティアラさんという女性をエスコートしながら
館内に招き入れた事覚えてますよー。そんな彼が幹部になるなんて、信じられません…
やっぱりそうか…、俺の目に狂いは無かったという事か。
ちなみにユメはどうだった!?
私はルドスさんと一緒に記憶の断片探してくれましたよー。
ちょっと先走りするタイプでしたけれど、親身になって接してくれました!
また会いたいですー!
そう言ってくれるなんて嬉しいな…。
あまり人から感謝される事ないからな…、助けに来たぞ、お前等!!!
皆(ライト達/リリカルラビット4匹/ブル)が閉じ込められているこの場所に突き止めて
助けに来てくれたのはビアンラボのスタッフであるルドス。
そう、彼は決して自分の行いがイヤになって
抜け出した訳ではない…。それもジハイド所長が企てた作戦の1つ…
****
今から数日前の出来事。
ビアンラボの屋上にて、上層部であるジハイド所長、クロス、ルドスの3人で
誰にも聞こえないように作戦会議をしていた。
クロスさん、ルドスさん…聞いて下さい…。
これは推測に過ぎませんけれど、以前のようにスティードさんが
エディールさんに情報提供をしていたように、スタッフ、或いは君達の仲間の中に
内通者がいるかもしれない…。
確かに奴の計画に何1つ隙がないのは可笑しい…
張り巡らされた蜘蛛の糸のように何処か1つでも解せば
糸口が見つかるかもしれないな! ただ、どのように誘き出すかだ。
ルドス、お前ならどうする…?
…………!
危ない橋を渡る事になるけど、方法はある。
嫌になってブルとナギに八つ当たりし、
シャウトシグマを投げ捨てるように仕向けて落ち込んだ振りをしてここを退散する。
そのまま俺はヒルハイドタワーに向かうって言うのはどうだ?
無謀過ぎる…。けれどもこれしか方法がない。
剣を失う以上、エディールとグレイザーに勝ち目はないかもしれない…
ただ、ここで立ち止まっちゃいけないんだ…!
分かった。俺もここで出来る限りの対処はしよう…
ただ無茶だけはするな。
お前にしか出来ない所業だ。皆を守るんだろ?
頼りにしてるんだからな…!
貴方がビアンラボのスタッフで本当に良かった…。
今の状況を打破できるのは、ルドスさんだけです!
悪を退治して、無事に帰って来て下さい…。後ジルバさんに会えたら良いですね!!
信頼されるって言うのはこんなに気持ち良いんだな…。ありがとな!!!
ルドスは以前、幹部を束ねるボス「エディール」主催の
バトルトーナメントオーディションの決勝戦でゼシアと戦い、戦闘不能まで追い詰めた所
彼が発した呻き声が会場外にいた友達のグレイザーにも聞こえ、乱入して来た。その強さに惹かれ
エディールに目を付けられてしまい無理矢理幹部にさせてしまった過去がある。
拭い切れない真実…
それ以降彼は背負わないといけない過去と戦いながら今を懸命に生きていた。
ブライドゼータを守れなかった事
グレイザーの友達であるゼシアを傷付けた事
どれもマイナスだらけの事だけど、信頼関係だけは彼の強さの中にある優しさのお陰で
沢山の人や、リリカルラビットに囲まれ築き上げていた。
****
場所は再び、ヒルハイドタワーの地下収容施設。
リリカルラビットが閉じ込められている部屋の前で佇むルドス。
もう過去は振り返らない…!
今を生きるんだ。そして俺はお前達全員を守る義務がある!
ビアンラボのスタッフとしてな!!
よく言った。これでこそルドスや!!
さてと聞くが、この部屋の檻どうやって壊すんだ!?
ライオットという奴が一度壊したせいか、もっと頑丈な作りになってしまったんや!!
地下収容施設にある檻を意図も容易く1つずつ壊し始めていく。
これは持っているスキルのお陰? それとももともと体力に優れているお陰?
ただ、突如として現れた彼は一度会った事がある人物のようで驚きを隠せずにいた…
皆さん、助けに…って
あっ…! やっとライトさんとリオルドさんに会えた…
ずっと会うのを心待ちにしていたんですよ!!
よう。裏切り者のオルーム…
今更助けに来たとでも…!?
父さんを傷付けたんだ。絶対に許さないからな…!
えっ…。ぼ、僕がリオルドさんを…ですか。
そんな事しませんよ…。助けてくれた恩人ですよ…、そんな事出来ません…。
それに僕ライトさんを探しに行ったきり、ずっとリオルドさんの所に戻るの忘れて
この3匹のモンスターと戯れていたんですよ。皆来てくれませんか…?
【ウルグ】
ここがヒルハイドタワーか。ご主人様には近付くなとは言われていたけど…
まあいいか。よう、ユウマにアル。久し振りだな…!
もちろん覚えているよな…。
あっ、あの時の…。ルドスさん、助けて下さい…
旋律の館に向かう最中に、確か…ウルグさんとスレイドさんに襲われたんですよー。
【スレイド】
襲ったなんてめっぽうもない…。
ただ可愛いメスのウサギがいたから声を掛けただけですよ…。
まあ、もう興味はありませんので襲いません。
ずっとオルームさんの遊び相手になっていたんです。
そしたら彼が突然ここに行くって言いだしたので…。ですよね、キュシール?
【キュシール】
はい、スレイド様…。
オルームさんと触れ合えて楽しかった…
だけど、ここの雰囲気は嫌いです…。何か重苦しい…
ほら。こう言うのもなんですけど…
この3匹が証人です…。
ただ、遊ぶのに夢中でずっとリオルドさんの所に戻れなくてすみませんでした…
お前の無事な顔が見られて安心した。ただ、どういう事だ?
じゃあ、あのオルームは一体誰なんだ…。
まさか、誰か変装とかでもしてたのか?
俺とライトを傷付き、尚且つシャランアゾールまで…!
そうだ、オルーム。
お前、頭の方はもう痛まないのか?
倒れているのを俺達が見つけなかったら、危なかっただろ…!!
あっ、そうだ…。
思い出した…。あの時、僕の事襲った人の名前…
確か、シルディートって言っていたような…。
(えっ!? まさかアンドルディシアが動き出してるのか…!?)
****
ヒルハイドタワー最上階――。
エディールと会話を交わしていたオルームの姿が少しずつ歪み始めていて
彼の声、そして服装も元の姿に戻って行く現象が起きていた。
シルディートだろ…?
様子が可笑しかったのは薄々気付いていましたよ…
まさか、ずっと変装していたなんて思わなかった…。さあ、姿を現せ…!
ずっとオルームに変装していたのは皇帝のお膝元である
暗躍組織「アンドルディシア」のメンバーであるシルディート。
そう、彼が所持するスキルは「変装」。
ただ、この大陸「クロスウッド」での変装は禁忌に分類され
声、体型、性格、口調、そして服装まですべてインプットされ、
成り済ましなどの被害が頻繁に起きている程。変装する際は標的をまず襲撃しなければならない。
よう、エディール様…。殲滅楽しかったぞ…!
オルームの持つ断割のスキル、気持ち良かったぜ…。
はぁ…。しかしながら良く
オルームさんに変装出来ましたね。どうりで私の闇のパワーを容易く
注入出来た訳ですね。貴方のステータスは皇帝もお墨付きですからね…
じゃあ、もちろん…
オルームさんだけにしか分からない "皇帝" の正体も分かりますよね。
私にだけこっそり教えてくれませんか?
聞こえなかったので、もう一回言ってくれませんか…?
…………!!
申し訳ございません。皇帝の正体、分かりません…
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