50話:ブルの過去!非情なるエディールの裁き!!(後編)
文字数 2,613文字
前回のあらすじ
ブルがずっと心の底に隠していた過去、それは一番最初に飼っていた愛犬「マーブル」を連れて
ヒルハイドタワーに会いに来た…、いや、その場所を取り仕切るエディールからしたら
彼は不法侵入者として捉えられてしまい、始末しようとブルに攻撃を放つ。けれども
ご主人様を助けようと、必死にブルの背中を押して
バタンと倒れ込み、その場から動かなくなり
亡くなってしまう…。
※ このお話には少しグロテスクな表現が含まれています。
マーブルっ、僕を庇って…。
ごめん…。僕がこんな場所に来たまでに…
マーブルは僕の笑顔が好きだったなー。
いっぱい色んな場所行ったよね! 遊んだり、一緒に寝たりして…楽しかったよ!
もう泣くのは止めよう! マーブルも望んでないもんねっー!
よくポジティブに考えられますね…
貴方、目の前で自分の愛犬が私の手によって始末した光景を見たんですよ…
少し位恨むとか…そう言う感情、無いのですか?
だって、マーブルの事が好きだもんー。
もちろん亡くなったのは辛いよ。けれど僕の心の中ではまだ生きてるんだー!
ほら、ワンって泣き声がして来たー。やっぱり!
善のパワーが強過ぎますね…
このままではブルさん、言いふらす可能性が高いです…
グラスさん、例の "アレ" をお願いします…。
えっ…!?
まさか…。本当に良いのか?
わ、分かった。今檻から出します…!!
アルク…!地下収容施設に行って、例の "アレ" を頼む…。
聞こえたなら返事をしろ…!
****
ヒルハイドタワー、地下収容施設――。
まだ清潔に保っていなかったせいか、所々サビだらけ。
現在は部屋として1つ1つに扉が設けられているけれど、この頃は頑丈な檻で何かを捕らえていた…。
そこの管理を任されていたのが、オルガの兄であるアルク…。
エディール様、アレを解放するんですね…。
さてと何処にいるかな…。えっと…
あっ、いた…。おい、聞こえるか!
お前の出番が来た。今檻開けるから大人しくしてろよ。
これはエディール様からの命令なんだ。
背いたらどうなるか分かるよな?
****
再び最上階――。
エディールはブルと亡くなった愛犬マーブルに寄り添うように寝ている行為を見て
未だかつてない程の怒りを覚えていた。
大好きだよー、マーブルっ!
やっぱり僕の自慢の愛犬だー。
私の声が聞こえないようだな…。
そういう態度を私にして良いんだな。良い度胸してるな、ブル…!!
良いだろう、マーブルが居ない今、ここにいるのは…。ん、何だ?
言う事があるなら言ってくれませんかね…。
マーブルに寄り添っていたブルが立ち上がり、
一回呼吸を整えながらエディールの方を見て、積もりに積もっていた思いを吐き出す。
よくもマーブルを殺したな…。
あの日オークステリアで会ったお前は何処に行った?
鮮明に覚えている…。撫でてくれたじゃないか。
おや、ブル…。貴方も怒れるじゃないですか…。
人が抱える怒り、痛みが私の好物なんですよ。
それを全て闇に変える。私のスキルは「禍闇(かあん)」です…
まだ誰にも言った事がありませんでしたね…
それがどうした?
それを知った所でマーブルは戻って来ない…。
ただ、これ以上は怒らない。もう過ぎた事だ…
せめて供養ぐらいしてあげてくれ…!
はい…? 何でそんな事を私がしなくちゃいけないのですか…。
それにこれ以上言っても、怒らないのですね。でしたら…
アルクさん、例の "アレ" を使って
マーブルを噛み砕きなさい…。見る影がない程にな…!
これで、マーブルもおしまいだな…。
供養しないまま終わるか。哀れだ…!
アルクの号令でニャタリウスがブルの愛犬「マーブル」の元に猛ダッシュをし始め
マーブルの皮膚を食い散らかして、ヒルハイドタワーの最上階は
レッドカーペットが敷き詰められているように血で染まり出して行く。
【ニャタリウス】
久々の犬の血じゃないか…。
こんなにうめぇなんてな…! もっと噛み砕いて
マーブルの血を飲み干してやる…。
ね、猫…!!
えっ、猫ってこんな獰猛なの…?
僕の知っている猫じゃない…。や、止めてっ!
マーブルは亡くなっていても家族なんだ…!!
へえー。
そんなのは知らないよ。だって久々に解放されたんだもん…
一部の記憶はないけど、衝動的に身体が動いたからね。
さてと…続きの血を頂こうかしら…
マーブルの血を全部飲み干して肉球で口周りを吹いているニャタリウスがブルにこう告げる…
美味しかった…、ごちそうさま…ブル。
ちゃんと育成出来ていた証拠ね。
躾や与えていた餌次第で血の味が変わる…。一品モノだった…!
どうでしたか…? ニャタリウスさんは
皇帝の崇高なる計画に置ける実験に
成功している材料の1つなんですよ…
次の狙いも決まっています。今その準備を行っているんです…
聞こえているよな…!?
ブルは目の前で無残にもニャタリウスの手によって
見るに堪えない姿にさせられてしまった光景を見てしまい、
一緒に供養も出来ずに現実逃避をしてしまう。今はその場から逃げる事しか考えていなく、迷う事無く
彼は最上階である30階の窓を突き破り、死ぬ覚悟で落下していく。
このままではまずい! と一瞬でも思ったエディールは
スキル「禍闇(かあん)」を繰り出し、ほんの少しでも
闇を芽生えさせて置こうと飛び降りたブルを空中で追い掛ける…
く、やはり空中では狙いが定められません…
意地でも…。よし、追いつきました…
滞空しながら地面へと落ちて行くブルの手を繋ぎ、
エディールの身体から滲み出る闇のオーラを少しだけ注入して、何処かへと立ち去っていく…。
これでいいでしょう…
少しだけですけど、闇を注ぎ込む事に成功しました…。
これでブルさんはもう逃げられません…
いずれまた会いましょう…、それまでは自由に生きて下さい。では失礼します…
ブルはヒルハイドタワー周辺の草陰に落ちて、そのままマーブルの事を思いながら気絶してしまう…。
ニャタリウス、このモンスターとの出会いが彼が猫を嫌いになった理由。
時間軸で言うと、エディールに再び会うまでにブルが麓町「オークステリア」を旅立ち
シャランアゾールでレシールと会い捨て犬と捨て猫を拾った後のお話。
そんな時、倒れ込んで気絶をしているブルの目が一瞬開き、こう言い放つ…。
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