恥も外聞もなく
文字数 420文字
豹真はと見れば、あのひきつった笑みを浮かべています。背中に悪寒が走りました。言霊「ほむら」が使われるときに感じる、あの感覚です。
僕と豹真の間にあるものを知らないはずの理子さんがたしなめにかかるほど、その場の雰囲気は悪くなっていました。
しかし、これこそ僕の出番です。
僕は恥も外聞もなく、町内会長さんを含む大人たちひとりひとりに媚びて回りました。傍目からみれば、その場の空気に耐えきれずにテンパってしまった根性なしの高校生そのものだったでしょう。
豹真を含め、理子さんも、町内会長さんも、その場にいる全員が引いてしまったことが、肌で感じられました。
しばらく誰も口を開かず、部屋一杯に気まずい雰囲気が充満していました。