真珠のしずくが彼女の目に光る
文字数 474文字
うかつに読んではいけないのです。読んだら最後、とんでもないことが起こります。
それなのに、あなたは一歩進んで詰め寄りました。
途方に暮れたところに、ぐいと眼前に迫るあなた。
朝から呼び出されて、訳のわからないものを読まされて、読まないで済まそうとしたところを責められる。
僕には何の非もありません。雰囲気的に反論は無理ですが。
でも、黙って帰るのは難しくありません。相手は年下の女の子です。
そんな卑劣なことまで考えたそのとき、僕は気付きました。
あなたの目に光るものに。
真珠のしずくにも喩えられるものに。
そのとき、空はうっすらと白くなりました。
一瞬だけ、天から吹き降ろしてきた春の風。
あなたの涙をそれでむざと落とすに忍びなく、僕は覚悟を決めたのです。