回りくどいカミングアウト
文字数 419文字
「思えば町内にある私立勿来高校に2年生として転校してきたのは3月の末。それからせいぜい2週間で、一度も登校しないまま再び転校することになったこと自体、まともではありません。(まあ、慣れてはいますが)」
ため息とともに、列車はゴトンと動き出す。少年は字の揺れを避けるためか、便箋から手を離した。
そのまま、しばし書くか書くまいか迷っている様子だったが、やがてペンは再び紙の上を滑りだす。
「だからこそ、正直に書きます。隠していても仕方ないので。再び会うこともないでしょうから。(手紙でよかった……)」
少年の頬に、おどけたような笑みが浮かぶ。
そこで書き加えたのは、本心とも冗談ともつかない文句だ。
「あなたと過ごしたこの時間を、忘れないでいようと思います。
たぶん、僕は呑み込みの悪いバカとしか思われていなかったでしょうけど」
そこでペンの動きは、何かを吹っ切ったかのように、一気に加速した。