回りくどいカミングアウト

文字数 419文字

……ちょっとくどいかなあ。
「思えば町内にある私立勿来高校に2年生として転校してきたのは3月の末。それからせいぜい2週間で、一度も登校しないまま再び転校することになったこと自体、まともではありません。(まあ、慣れてはいますが)」
……は~あ。

 ため息とともに、列車はゴトンと動き出す。少年は字の揺れを避けるためか、便箋から手を離した。

 そのまま、しばし書くか書くまいか迷っている様子だったが、やがてペンは再び紙の上を滑りだす。

「だからこそ、正直に書きます。隠していても仕方ないので。再び会うこともないでしょうから。(手紙でよかった……)」
……ふっ。

 少年の頬に、おどけたような笑みが浮かぶ。

 そこで書き加えたのは、本心とも冗談ともつかない文句だ。

「あなたと過ごしたこの時間を、忘れないでいようと思います。

 たぶん、僕は呑み込みの悪いバカとしか思われていなかったでしょうけど」

そこでペンの動きは、何かを吹っ切ったかのように、一気に加速した。
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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、常に重大な決断を回避しようとする癖がある。

 しかし、追い詰められて発する力は地球の大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、それは自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いによる。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、たとえ年長者でも、直面する問題から逃げることを許さない。物静かだが、時機を捉えれば、やるべきことをやり遂げる。

 ただし、最小限の手間で……。

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