春の嵐と祭の終わり
文字数 474文字
瞬く間もなく、舞い続ける理子さんの巫女の衣装の周りにふわりとしたものが立ちのぼりました。
全身が灼けついたかと思うとほどなく空が光り、テントに炎が走って衣装が燃え上がったかと見えた、その時です。
凄まじい風と共に、雨が塊となって僕たちの頭上から落ちてきました。
役場の避雷針に雷が落ちると共に悲鳴を上げて逃げまどう観客は、ふりしきる豪雨の中で蜘蛛の子を散らすようにいなくなり、そこには茫然と立ち尽くす町内会の人たちと、祭壇の上でびしょ濡れになってへたり込んだ僕たちだけが残されました。
やがて、誰かが我に返ったのでしょう。町の有線放送のコールサインが鳴りました。
悪天候及び川の増水のため、本日の行事は全て中止いたします……町民のみなさま、充分に気をつけてお帰りください……。
町役場の人が聞き取りにくいくぐもった声で、神楽を含む春祭りの中止を告げていました。