大人・子供それぞれの喧嘩

文字数 417文字

お前やろ、こんな壊れたカセットコンロ持ってきたん!
……すみません、あんなことになるとは。
先によう見んかい!
 あれは故障したものを使ったせいではありません、とこう言えばもう、察しはつくでしょう。
 やったのは、豹真です。理子さんには聞こえなかったかもしれませんが、あの時、豹真はとあるプロ野球チームの応援歌を口ずさんでいました。

「……夢を、ほーむらン……」

 爆発は、その瞬間でした。豹真は、歌の文句に混ぜて「ほむら」を使ったのです。

 だから、僕は、帰り際に豹真を呼び止めました。

何であんなことやったんだ! あのおじさん関係ないだろ!
俺は人助けをしたつもりなんだけど……な。
 まかりまちがって雷を呼んでしまっても困るので、なるべく冷静に話しかけたつもりだったのですが、しれっと答えた豹真には、さすがに怒りがこみ上げてきました。
誰が助かったんだよ、誰が!
お前がさ。
 僕は鼻先に突きつけられた人差し指を、手の甲で弾くように押しのけました。
……!
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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、常に重大な決断を回避しようとする癖がある。

 しかし、追い詰められて発する力は地球の大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、それは自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いによる。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、たとえ年長者でも、直面する問題から逃げることを許さない。物静かだが、時機を捉えれば、やるべきことをやり遂げる。

 ただし、最小限の手間で……。

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