理子の返答

文字数 436文字

 ……檜皮さんが町を出ようとしているのだということは分かりましたが、どう思っているかと言われて困りました。
(……だって、知り合って1週間ぐらいしか経ってないのに)

 あなたと樫井さんがどのような立場の人かというのは、あの河原で察しがつきました。

「……勉強がどうとかいいながら、これやってる時点でサボってんだろ。で、それをおふくろさんだの町内会長だの引合いに出してごまかしてんだろ?」
「違うわ! 私は……」
 私も、普通の人間ではないからです。

 ノロやユタと呼ばれる人たちをご存知でしょうか?

 太古から、天地自然の神々を体の中に感じ、その言葉を伝える業を受け継いできた人たちです。現在でも、まだ奄美辺りや沖縄にいると聞きます。

 私にも、その血が流れています。

 神楽を守り、神楽を支える人を守り、その暮らしを守ること。

 刀根の家の女がすべて、それができる者とは限りませんが、素質があると見なされれば、天地自然と一体となる術を物心つく前から教え込まれるのです。

 私も、その一人です。

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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、常に重大な決断を回避しようとする癖がある。

 しかし、追い詰められて発する力は地球の大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、それは自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いによる。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、たとえ年長者でも、直面する問題から逃げることを許さない。物静かだが、時機を捉えれば、やるべきことをやり遂げる。

 ただし、最小限の手間で……。

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