陽炎の舞
文字数 476文字
僕のか理子のさんか、少なくともどちらか、衣装の焦げる臭いがしました。
犠牲を払ってでも理子さんを「ほむら」の言霊から守る覚悟は決まり、僕は遠くから見つめているであろう豹真を見据えました。
心の中で叫んだ、そのときです。
豹真に向けて稲妻を放とうとした僕の耳に、理子さんの悲鳴が聞こえてきました。
まだ火は出ていません。しかし、理子さんの状態はただ事ではありませんでした。
祝詞を上げるその声は、ここ数日聞いていた中学3年生の女の子のものではなく、地の底から轟いてくるような響きを持っていました。
鈴を振り鳴らし、髪を振り乱し、独楽のように舞う巫女の姿に目を奪われた僕の視界の隅で、光るものが二つありました。
一つは、暗い雲の中で閃く稲妻。
もう一つは、テントの端で揺れる陽炎。