田舎町の情報セキュリティ

文字数 457文字

(すると……これだな、いちばんシンプルな手は)
 僕はその足で、町内会長さんの自宅を探して走りだしました。町内の要所要所には、どこに誰の家があるかという見取り図の掲示板が堂々と並んでいます。
(信じられない……個人情報バレバレじゃないか?)
 手近な見取り図に従ってたどり着いた先は、古い駄菓子屋でした。

(串イカ……薄っ!)

(チューブ入りゼリー……バリバリ原色。絶対、何か入ってる)

(どっかで見たキャラクター商品……微妙に著作権クリア、いわゆる『パチモン』?)

 ……そんなことは、どうでもいいですよね。結構つらいことを思い出しながら書いているので、勘弁してください。

 さて、薄暗い店先を通り抜けたところにある畳の間では、町内会長さんがドテラを掛け布団代わりにして、見るからに温そうな春ゴタツで昼寝をしていました。

すみません……。
 声をかけると、目を覚ました町内会長さんは、すぐにドテラを羽織って起き上がりました。
おお、和洋くんか。
 まるで就学前から知っているかのような気安さでしたが、僕はかなり思い切って頭を下げました。
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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、常に重大な決断を回避しようとする癖がある。

 しかし、追い詰められて発する力は地球の大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、それは自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いによる。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、たとえ年長者でも、直面する問題から逃げることを許さない。物静かだが、時機を捉えれば、やるべきことをやり遂げる。

 ただし、最小限の手間で……。

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