祝詞の意味すること

文字数 484文字

……。
「現代語訳すると、こうでしょうね」

 そう書き綴った少年はメモをちらちらと見ながら、いとも簡単に、上代の言葉を罫線の間へと解き明かす。

『始めましょう、始めましょう。太陽の御子がおっしゃいました、「おまえがこの国に来て1年、2年という長い時間が経ったので、永遠の恩恵を与えよう」と』
『お受けしましょう、お受けしましょう。私は3年、4年、永遠に、太陽の御子の恵みを受けて、5種類の穀物をここに休めましょう』
『5種類の穀物とは何でしょう。どこから来たものですか。1つ・2つ・3つ・4つ・5つ数えて、聖なる太陽と聖なる水のもとで育てましょう』
『それは米・麦・豆・粟・稗です。月の神が殺したという豊穣の神から生まれたもので、6・7・8・9・10年の間、実ったものをまた生み出して、聖なる太陽と聖なる水を祀りましょう』
『聖なる太陽と聖なる水をどうやって祀りましょう。5種類の穀物と10年間の実りを誰が継ぐのでしょうか、どうやって継ぐのでしょうか』
『花が次々に咲くように子が子を産んで孫を抱き、神々を春は山から迎えて、夏は里でもてなし、秋は山へ送って、冬は遠くから崇めましょう』
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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、常に重大な決断を回避しようとする癖がある。

 しかし、追い詰められて発する力は地球の大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、それは自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いによる。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、たとえ年長者でも、直面する問題から逃げることを許さない。物静かだが、時機を捉えれば、やるべきことをやり遂げる。

 ただし、最小限の手間で……。

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