豹真の罠

文字数 410文字

豹真君は? 時間やぞ。
来とりません……こっちでやりますわ。
 町内会の大人が代わりにBGMを務めることになっていましたが、トラブルはまず、そこで起こりました。
こら、だちかんわ、横笛の音が出ん!
何がいかんのやろ……スピーカーの配線調べて!
何だ、ありゃ?
あら、楽しみにしてたのに……できないの?
 町内会長が慌てはじめ、町内会のスタッフがどたばた走り回り、それに気づいた観客も騒ぎ出しました。

(……豹真だな?)

(……配線に何か、細工したんだ)

何……? どうしたの? 神楽は?
(……できなかったら、それはそれで)
 決闘が無効になれば、闘わなくていいし、理子さんをはじめとして、傷つく人は誰もいません。しかし、世の中はそんなに甘いものではないようでした。
(……笛の音?)
 アンプからは音が出ていないのに、お囃子の横笛はどこからか聞こえてくるのです。

 僕の頭の中に、あの捨てゼリフが蘇りました。

(……だったら、俺が吹いてやるよ……!)
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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、常に重大な決断を回避しようとする癖がある。

 しかし、追い詰められて発する力は地球の大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、それは自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いによる。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、たとえ年長者でも、直面する問題から逃げることを許さない。物静かだが、時機を捉えれば、やるべきことをやり遂げる。

 ただし、最小限の手間で……。

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