冷たい彼女がいきなり方言女子に

文字数 517文字

リコちゃん、それはどもならんて。
 町内会長さんの情けないフォローであなたの名前が「とね・りこ」というのだと察しがつきました。

(……「とね」?)

(……刀祢と書くのか、刀根と書くのか)

 名前に漢字をどう当てればいいのか、いろいろと考えていた僕の頭を現実に引き戻したのは、急に方言アクセントになったあなたの、ちょっと横柄な口調でした。
有馬高生は、もう探しないたんかな?
……探したわあ。
 町内会長さんは口を尖らせて答えましたね、目をそらしながら。
(……有馬高校?)

(……そういえば、そんな名前の公立があったっけ、転校先とは別に)

 どちらかというと、当然、そこそこレベルが高くて、授業料を払わなくていいほうが魅力です。

 しかし、訳あって急に引っ越したので、定員の厳しい公立ではなく、何とかなる私学に入らざるを得なかったのです。

(……『有馬高生は、もう?』って?)

(……ああ、もともとお呼びでなかったんだな、僕は)

 少し惨めになりましたが、そんな気持ちは、あなたの知ったことではなかったようです。

 パイプ椅子の倒れる音が、稽古場一杯にけたたましく響きました。

ちょっと来てくれませんか?
 立ち上がったあなたは、冷たい眼差しで僕を見据えていましたね。
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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、常に重大な決断を回避しようとする癖がある。

 しかし、追い詰められて発する力は地球の大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、それは自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いによる。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、たとえ年長者でも、直面する問題から逃げることを許さない。物静かだが、時機を捉えれば、やるべきことをやり遂げる。

 ただし、最小限の手間で……。

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