理子式トレーニング理論

文字数 444文字

 理子さんの言う「特訓」のポイントは、もっともなことでした。相手が僕でなかったら、たいてい上手くいくだろうと思います。

 檜皮さんは、必ず同じ言葉を間違えます。間違えるから、違う言葉でごまかそうとするんですよね。
(……後半だけ当たってる)
私、思うんですけど、その言葉を言おう言おうとして構えるから、かえって間違えちゃうんじゃないでしょうか。

(よかった……そう取ってくれてたんなら)

 安心しました。言霊使いが人の中で生きていくのに肝心なのは、自分が起こした不自然な行動や現象に、どうやって理由をつけるかということですから。

 さらに、理子さんのアイデアは目の付け所もさるところながら、その方法も独創的でした。

 ですから、その言葉が口グセになればいいんじゃないか、と思うんです。意識するのが原因なんですから、無意識のうちに声が出ればいいんです。
 ゆっくり話したのは、僕があまり賢くない、という配慮からだと思います。もしかするとバカにされていたのかもしれませんが、いい思い出のほうを取っておきます。
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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、常に重大な決断を回避しようとする癖がある。

 しかし、追い詰められて発する力は地球の大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、それは自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いによる。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、たとえ年長者でも、直面する問題から逃げることを許さない。物静かだが、時機を捉えれば、やるべきことをやり遂げる。

 ただし、最小限の手間で……。

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