暗闇を這う光の蛇
文字数 474文字
これは憶測ですが、言霊「ほむら」と共に、横笛の技も引き継がれたのではないでしょうか。
豹真の挑戦のはじまりでした。闘いぬかなければなりません。
そのとき横笛の音は止まりましたが、そのくらいのことで、始まってしまった神楽を止めることはできなかったでしょう。
ましてや、伝統の「日御子神楽」に気を取られている関係者と観客に、豹真の操る「ほむら」が聞こえるわけがありません。
体中を悪寒が走り、豹真の言霊が働き始めたのが分かりました。
急がなければなりません。僕は目を閉じ、心の中に閃く稲妻と向き合いました。心の闇の中を疾走する、閃光の蛇と。
やがて、身体の中をぞろりと這うものがありました。
これが、僕の中に潜む「ナジ」……上代の言葉で「蛇」を意味する言葉です。
祝詞に乗せて、僕は心の中の「稲妻の蛇」を天空へと解き放ちました。