ハートの手紙のお礼
文字数 501文字
……渓谷沿いの小さな駅に電車がごとりと止まると、制服姿の高校生や大きなカバンの旅行客が乗り込んでくる。
少年は窓際にちょっと身体をすくめて、器用にペンを走らせる。
「……さて、長々と書きましたが、幼稚ないわゆる中二病の絵空事と思っていただいたほうが気が楽です。お互い、そういうことにしておいたほうがいいのかもしれません」
鞄の中から取り出した小さな封筒にハートのシールが貼ってあるのに気付いたのか、相席の乗客が冷やかし気味に尋ねた。
少年は意味深に微笑む。
再び手紙の続きが綴られる。
「……最後に、改めて手紙のお礼を申し上げます。
まさか、豹真がお節介を焼いていたとは思いませんでしたが、それにしても電光石火の早業でしたね、理子さん。
すぐに手紙をしたため、勿来高校に先回りするとは……」
そこで眺めるのは、「勿来高校」のロゴが下半分に印刷された学校指定の封筒である。
曖昧な返事にそれっきり会話は途切れ、少年は手紙の結びにとりかかる。