理子と二人きりの道

文字数 419文字

しなくていいよ、そんなこと。
 理子さんが真っ先にやったことは、僕に詫びることでした。でも、その一言で、心は決まっていたのです。
(……豹真と闘って、あなたを守る!)
 僕は何を迷っていたのでしょう。単純な話だったのです。その結果、父と共に再び流浪の身となっても、それが普通の人間とは違う「言霊使い」の宿命だと割り切れば済むことではありませんか。
分かりました。
 抑揚のない声で答える理子さんがどんな目で僕を見ているのかは、もう暗くて見当がつきませんでした。別の考え事ができた僕はとりあえず、家の中に戻ることにしました。
(……決闘状って、どうやって書くんだろ)
 でも、答えは出ませんでした。ちょっと不機嫌な声で、理子さんに呼び止められたからです。
そこで送ってくれるのがエチケットだと思うんですけど。
(……そんなもんかな)
 ついていくことにはしましたが、実際はどういうものなのでしょう。女の子とつきあったことのない僕には、いまだによく分かりません。
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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、常に重大な決断を回避しようとする癖がある。

 しかし、追い詰められて発する力は地球の大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、それは自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いによる。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、たとえ年長者でも、直面する問題から逃げることを許さない。物静かだが、時機を捉えれば、やるべきことをやり遂げる。

 ただし、最小限の手間で……。

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