豹真の挑戦

文字数 412文字

どうしたんやな?
 話をろくに聞いていないのに気付かれたみたいでした。
……あ、ああ、ええと……刀根さんは?

 もう帰ったよ。この辺じゃ名の知れた旧い家のお嬢さんでねえ……。本当なら、こんな風に出歩くようなお許しものうて、学校の帰りも早いんよ。

 やっぱり、受験生の気持ちは経験してすぐでないと分からないものですね。
(じゃあ、僕も……)
ちょっと顔貸せ。
 すぐに帰ろうとしたところで声をかけてきたのは、相変わらずぶすっとした樫井豹真でした。
(……ここで帰ったら後がめんどくさいよね、絶対)
すぐそこだよ。
昼飯前に済む用事なら。

 遠くて近いは田舎の道、とはよく言ったものです。

 着いた先は、公民館からだいぶ離れたところにある、山肌を削った採石場でした。

(……確かに近いとは言わなかったけどさ)
 人家のあるところなどとうになく、あるのは舗装もされていない道と、ごろごろ転がる大きな岩だけです。

 どう考えても関係者以外立ち入り禁止の場所です。

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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、常に重大な決断を回避しようとする癖がある。

 しかし、追い詰められて発する力は地球の大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、それは自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いによる。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、たとえ年長者でも、直面する問題から逃げることを許さない。物静かだが、時機を捉えれば、やるべきことをやり遂げる。

 ただし、最小限の手間で……。

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