刀根理子からの手紙

文字数 249文字

 ハートのシールと小さな封筒を前に、刀根理子は眠い目をこすりこすり、便箋に向かう。ライトブルーの壁紙が張られた部屋の中には、薄いレースのカーテン越しに朝日が差し込み、ライティングビューローを斜めに照らしている。
ふあ……。

 あくびひとつ漏らして、便箋に凄まじい速さでペンを走らせる。

「……今朝早く、樫井豹真君が訪ねてきて、檜皮さんが町を出ていくということを知らされました」
ん、もう……!

 前日の神楽騒ぎで疲れ切っているところを叩き起こされ、慌てて着替えて門前へ出たときの機嫌はすこぶる悪かったようだ。


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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、常に重大な決断を回避しようとする癖がある。

 しかし、追い詰められて発する力は地球の大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、それは自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いによる。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、たとえ年長者でも、直面する問題から逃げることを許さない。物静かだが、時機を捉えれば、やるべきことをやり遂げる。

 ただし、最小限の手間で……。

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