僕の戦い

文字数 458文字

始めさもらへ、始めさもらへ、日御子のらしたまふや、な……。

 豹真が何をするつもりだろうと、僕のやることは前の日と変わりません。ただ、違うのは、できないのではなく、やらないということです。

 町内会長さんが再びダメを出しましたが、僕はアクセントを変えたり、言葉を変えたりしてごまかしをやめませんでした。

またかよ……。
……まあまあ。
 大人たちは渋い顔をしましたが、町内会長さんがなだめてくれました。
始めさもらへ、始めさもらへ、日御子のらしたまふや、な……あん……あうん……んん~……。 
おい、何とか言ってやれよ!
ああ、まあ、落ち着いて……。
 それでもとうとう、一人が怒りだして町内会長さんと喧嘩を始めたのは、練習を繰り返すたびに堂々と間違いをやらかす僕の横着さに我慢が出来なくなったからでしょう。

 その怒りの矛先が僕に向かうのも当然です。 

おい、坊! ちょっとこっちこい!
すみません!
 怒鳴られても、もう怖くありませんでした。大げさなぐらいに頭を下げてみせましたが、そんなことで許してもらえないのは想定内です。
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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、常に重大な決断を回避しようとする癖がある。

 しかし、追い詰められて発する力は地球の大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、それは自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いによる。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、たとえ年長者でも、直面する問題から逃げることを許さない。物静かだが、時機を捉えれば、やるべきことをやり遂げる。

 ただし、最小限の手間で……。

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