樫井豹真から刀根理子への手紙

文字数 221文字

 四十万(しじま)町、私立勿来(なこそ)高校の始業式前日のこと。

 桜の花びらが舞い散る朝、白壁に囲まれた旧家の厳めしい門の前から、小柄な少年が駆け去っていく。

……。
 その隣の小さな木戸を閉めながら、眠たげな眼をこすりこすり、ピンクのヤッケを羽織った1人の少女は封筒に入った1通の手紙を恐る恐る、ためらいがちに開く。
……。
 そこにはたった一言、こうしたためられていた。
……え?
「あいつをどう思ってるか知らないが、いなくなったら一生、後悔する」
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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、常に重大な決断を回避しようとする癖がある。

 しかし、追い詰められて発する力は地球の大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、それは自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いによる。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、たとえ年長者でも、直面する問題から逃げることを許さない。物静かだが、時機を捉えれば、やるべきことをやり遂げる。

 ただし、最小限の手間で……。

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