理子の決断
文字数 581文字
仲間と遊ぶこともせず、母について山を歩き、川に沿って歩き、たまに海に行けば人目につかないところで水を浴びて天に向かって叫ぶ……。
そうすることで、私の体の中には自然の動きと共にある、泣き笑いが生まれてきました。
想像もつかないことかと思いますが、これは恐ろしいことでもあります。
私が自然と共にあるということは、自然が私と共にあるということでもあるからです。
自然の変化は私の感情を豊かにしてくれますが、私の感情は自然を豊かにはしません。
それに気づいたとき、私は泣き、また笑うことをやめました。
笑っていればいいと思われるかもしれませんが、喜びは悲しみを知らなければ生まれてこないものです。逆もまたしかりで、泣くのをやめれば、笑うこともできなくなるものです。
そのためには、母に物を言わせるわけにはいきません。私は、神楽を完全に仕上げて、その上で家を離れるのを主張しようと考えはじめたのです。