父の一喝

文字数 443文字

分かってるよ。
 僕は言葉を遮りました。昔のことは、申し訳なくて父に言わせるわけにはいかなかったのです。
……。
 とにもかくにも、これで「僕が自分の非を認めて充分に反省した」という状態になったので、僕は痺れる足をこらえて立ち上がりました。
(説教は終わったよね……今までの経験からすると)
お前は何も分かっとらん!
ひっ……。
 今回の話にははまだ続きがあったのです。一喝されて再び着座した僕は、父のまなざしがいつになく厳しいのを感じました。

 こんな目で見つめられるときは、たいてい僕が致命的な失敗をやらかしたときです。

(……言霊で、人を傷つけてしまったんだ。身体か、心か、立場を)
 そんなわけで、僕も神妙な気持ちになって父の叱責を待ちました。

 ところが、僕が聞かされたのは意外なことだったのです。

なぜ、豹真と闘った?
あれは売られた喧嘩で……。

 さすがに僕もむっとしました。言霊を使ったのも、いさかいを避けるためです。

 そこは気持ちを抑えて丁寧に事情を説明しましたが、父の怒りは収まりませんでした。

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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、常に重大な決断を回避しようとする癖がある。

 しかし、追い詰められて発する力は地球の大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、それは自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いによる。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、たとえ年長者でも、直面する問題から逃げることを許さない。物静かだが、時機を捉えれば、やるべきことをやり遂げる。

 ただし、最小限の手間で……。

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