ヒノキとトネリコとの出会い
文字数 368文字
もちろん、慣れない昔の言葉の羅列をいきなり声にしろと言われて、できるものではありません。
最後の「汝」を呑み込まざるを得なかったのは、怪我の功名といったところでしょうか。
桜どころか、まだ朝晩が肌寒い頃でした。
あなたのまなざしに同じ冷たさを感じて、僕は言葉も出なかったのです。
あのとき、町内会長さんがあのタイミングであなたを紹介したのは、同じ空気を察したからでしょう。
そう言われても、すっかりすくみ上がってしまった僕は初対面の挨拶もできませんでした。
こう思ったからです。
(……とねりこ?)
(……何でガーデニングの話なんか?)
(……そりゃ、季節だけど)
まさか、あなたの名前だとは、その時は考えもつきませんでした。