困った手紙
文字数 634文字
ちょっと苛立ち気味に、今朝の事情を書き綴る。
「……わざわざ言いにくるほどのことでもありませんでしたが、樫井君としてはちゃんとしておきたいことだったようです」
手紙には書かないが、こんなやりとりがあったのだった。
そのときの気持ちは、残酷にもはっきりした言葉で綴られる。といっても、豹真本人が読むのではないから、問題はない。
「去り際に手紙を押し付けられて、正直ギクっとしました」
「自意識過剰と笑われるかもしれませんが、あの状況下で渡される手紙といえば、そういう類のものとしか思えなかったのです」
だが、そこは年頃の女の子である。
理子はそれを隠しもしないで書き綴る。
「それでも中身が気になって封を切ってみると、たった1行」
そこには、豹真が残した言葉がある。
そこで理子がしたためたのは、檜皮和洋に伝えるべき、そして樫井豹真には伝わることのない答えであった。