男同士で感じる屈折

文字数 392文字

 何だか気の毒でフォローの言葉もありませんでしたが、彼は自己完結してくれました。
 俺も別にやりたくないし、こうやってBGM流してるほうが性に合ってる。
(……本当はやりたいんだろうな)
 小さな町の神楽ひとつのことですが、それだけに何だかいじましくて、僕は話をそらしました。

神楽にクラシック?

 そんなあり得ないことは鼻で笑われても仕方がないのですが、豹真は結構、大真面目に答えました。

 自信たっぷりに。

お囃子さ、俺がやるのは。横笛を吹ける大人も減ってるんでな。

 その裏には、背の低さのせいで年相応のことができないことへの、いじけた気持ちがあったでしょう。何だか、フォローしてやりたい気持ちになりました。

じゃあ、さっき助けてくれたあの……ビバルディは?
 そんな言葉がとっさに出たのは、広い世界の中で同じ言霊使いと出会えた安心があったからかもしれません。心なしか、彼の頬も緩んだ気がしました。
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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、常に重大な決断を回避しようとする癖がある。

 しかし、追い詰められて発する力は地球の大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、それは自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いによる。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、たとえ年長者でも、直面する問題から逃げることを許さない。物静かだが、時機を捉えれば、やるべきことをやり遂げる。

 ただし、最小限の手間で……。

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