炎の妨害者
文字数 440文字
理子さんの表情は全く変わっていなかったので、照れ臭いとも思いませんでした。
さらに、拍手の割に褒め言葉もなく、僕はすぐに祝詞を挙げさせられたのです。理子さんの手拍子に合わせて。
しかし、「なんじ」と続けることはできませんでした。口にできなかったわけではありません。リズムに乗せられて、本当に喉まで出かかっていたのです。もし、本当に声になっていたら、広い河原の落雷という、危険な状況になっていたでしょう。
しかし、その落雷を阻んだのは、僕の意思ではありません。
そう、河原に踏み込んできた豹真でした。
理子さんがためらいがちに声を掛けたのは、当然の礼儀だったと思います。
別に同じ学校に通っているわけでもなく、ただ「日御子神楽」に関わっているというだけなのですから。
しかし、理子さんは豹真の眼中にはありませんでした。