くどい説教

文字数 410文字

 ……そんなわけで、僕が言霊を使ってしまったことに対するの父の怒りは、それはもうただごとではありませんでした。
で、そこには誰がいた?
……樫井豹真だけ。
それならまだいい。
 父はほっと安堵の息をついてつぶやきました。状況によっては、ごまかすのが大変なのです。言霊の働きが一度や二度目立ったくらいなら偶然で済みますが、ものによっては日常会話の中で特定の言葉を口にすることさえできなくなります。
分かるな……いわゆる「雨男」。
分かってる。
 あれは、雨を呼ぶ言葉が普段の会話の中に含まれているために起こる現象なのです。

 訓練されていれば、発した言葉が雨を降らせます。訓練されていない人の場合は、言葉が効果を及ぼす人と及ぼさない人で個人差があります。

一応、お前を鍛えはしたが……。
 言葉で雨を降らせる人でも、実際に天気を変えられる場合とそうでない場合があります。僕の場合は……。
ごめん、コントロールできなくて。
怪しまれたら、また……。
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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、常に重大な決断を回避しようとする癖がある。

 しかし、追い詰められて発する力は地球の大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、それは自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いによる。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、たとえ年長者でも、直面する問題から逃げることを許さない。物静かだが、時機を捉えれば、やるべきことをやり遂げる。

 ただし、最小限の手間で……。

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