僕はヒーローじゃない
文字数 425文字
僕は事情を包み隠さず、父に話しました。
もしかすると、聞いていた理子さんは、恩着せがましいと思ったかもしれません。
あるいは、子どもの喧嘩に親が出るのはみっともない、と思ったかもしれません。
しかし、僕はこうするのが最も正しかったと信じています。決してヒーローの行動ではありませんが、それで充分です。
なぜなら、僕は普通の人間ではありませんが、ヒーローでもないのですから。
豹真との経緯を知った父は、正座したまま、しばらく黙っていました。
やがて、父はぼそりと言いました。
そのとき思い出したのは、豹真の神経質に歪んだ笑い顔です。