理子の謝罪

文字数 361文字

……。
 訳が分からず、今度は僕が沈黙を決め込んでしまいました。

 父はというと、そのまま横になり、背中を向けてごろりと転がります。

あとは自分で決めろ。決闘状1枚あれば体裁は整うからな。
 そう言いながら、父はそこから動きもしません。
(……足がしびれたんだな)

 勝手に決めつけて、僕は散歩に出ることにしました。外はそろそろ暗くなっている頃でしたが、一人で考えるにはおあつらえ向きだったのです。

 しかし、そこでも予想外のことが起こりました。

……。
刀根……さん?
 そう、理子さんが玄関先に立っていたのです。
話は町内会長さんから聞きました。私のせいで苦しんでいらっしゃるなら、これから改めて説得に行ってきます。

 薄暗がりの中、冷たい春の風が、むやみやたらと頭を下げることなく僕をまっすぐ見つめる理子さんの髪を、微かに揺らしていました。

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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、常に重大な決断を回避しようとする癖がある。

 しかし、追い詰められて発する力は地球の大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、それは自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いによる。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、たとえ年長者でも、直面する問題から逃げることを許さない。物静かだが、時機を捉えれば、やるべきことをやり遂げる。

 ただし、最小限の手間で……。

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