祭りの由来

文字数 422文字

 古い街灯にぽつぽつと照らされる道を歩きながら、理子さんは祭のことを教えてくれましたね。
 遠い神代の昔、秋になっても収穫のない、貧しい村がありました。
……ここが?
……たぶん。
 薄暗かったせいか、ちらっと見上げる眼差しが、ちょっと怖かったのを覚えています。
……ごめん、邪魔して。
いいんですよ、退屈なら。
……お願いします。
 豹真との闘いが終われば、もう聞く機会のない話でしたから。

 行き倒れになった一人のよそ者が、村人の看病空しく命を落としました。死ぬ間際に、よそ者は、自分の身体を山の頂上に埋めるように頼みました。

 村人がその通りにすると、その冬、食料が絶えた村に多くの獣が下りてきて、人々に捕えられ、命をつなぐ糧となったのです。

 やがて春が巡ってくると、村はほどよい雨と日差しに恵まれ、さらに夏を過ごした後、その年の秋は豊かな実りで満たされました。

 そこで村人は、あのよそ者が外から訪れた神であることを知り、再び山へ送るために祭を始めたのです。

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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、常に重大な決断を回避しようとする癖がある。

 しかし、追い詰められて発する力は地球の大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、それは自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いによる。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、たとえ年長者でも、直面する問題から逃げることを許さない。物静かだが、時機を捉えれば、やるべきことをやり遂げる。

 ただし、最小限の手間で……。

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