放たれた気持ち

文字数 269文字

「……ああああああ! 」
 心の中で暴れ出した気持ちに任せて、雨風に身体を委ねたのです。
「米・麦・豆・粟・稗、月詠の弑する保食神より来たりて、五・六・七・八・九・十年、実りて生して速日、速水祀らん……!」

 だから、桜を全て吹き散らし、谷川を増水させてしまったあの嵐は、私の檜皮さんへの気持ちです。どう書き表していいか分かりません。

 恐ろしい女だと思われても構いませんし、忘れてもらったほうがいいかという気もします。

(……吹け! ……叫べ!)

(……私の、春の、心の、嵐!)

(……何もかも、吹き払え! 私の気持ちも……それから……檜皮……さん)

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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、常に重大な決断を回避しようとする癖がある。

 しかし、追い詰められて発する力は地球の大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、それは自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いによる。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、たとえ年長者でも、直面する問題から逃げることを許さない。物静かだが、時機を捉えれば、やるべきことをやり遂げる。

 ただし、最小限の手間で……。

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