私闘と決闘
文字数 409文字
それも、僕にはないものでした。せいぜい、咄嗟に服を脱ぐくらいが関の山です。
あれば、豹真とこんなことにはなっていません。理子さんを危険な目に遭わせることもなかったのです。
最後の決断を迫る重々しい声に、父に済まないという気持ちで胸がいっぱいになりました。産まれてこの方、それを何度繰り返してきたか分かりません。
僕は頭を垂れ、父の言葉を待ちました。
気の抜けた返事に、父は繰り返しました。
別に我が身が可愛かったわけではありません。そこは信念というか美学というか、納得しないと先ヘは進めないところでした。