炎と氷の対決

文字数 423文字

邪魔したみたいだな。
……!
 そこで理子さんが豹真をじっと見つめていたのは、「だったら帰れ」という意思表示だったのでしょう。

 しかし、豹真はそんな気持ちを読まない男です。

よっ……と。

 ぐらつく石を軽々と踏んで、さいぜんまで理子さんが座っていた大岩に腰を下ろしました。

見学ならお静かにどうぞ。
 そんな豹真を見もしないで言い放った理子さんは格好よく見えましたが、同時に心配でもありました。

 はっきり言えば、理子さんはあの場で帰ってもよかったのです。ああ言われて黙っているはずもない豹真なんかを、あなたが相手にすることはなかったのですから。

あんたが見ていろ。
おい……。
 止めた理由はもうお分かりでしょう。怪しまれるだけでもまずいのに、豹真が言っているのは、「僕との闘いを見ていろ」ということなのです。
帰ってほしいってさ、檜皮センパイは。
 ……。
 笑う豹真の前で慌てる僕を、理子さんはじっと見つめましたよね。まるで、豹真とどっちを選ぶか、と問うかのように。
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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、常に重大な決断を回避しようとする癖がある。

 しかし、追い詰められて発する力は地球の大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、それは自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いによる。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、たとえ年長者でも、直面する問題から逃げることを許さない。物静かだが、時機を捉えれば、やるべきことをやり遂げる。

 ただし、最小限の手間で……。

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