炎と氷の対決
文字数 423文字
そこで理子さんが豹真をじっと見つめていたのは、「だったら帰れ」という意思表示だったのでしょう。
しかし、豹真はそんな気持ちを読まない男です。
ぐらつく石を軽々と踏んで、さいぜんまで理子さんが座っていた大岩に腰を下ろしました。
そんな豹真を見もしないで言い放った理子さんは格好よく見えましたが、同時に心配でもありました。
はっきり言えば、理子さんはあの場で帰ってもよかったのです。ああ言われて黙っているはずもない豹真なんかを、あなたが相手にすることはなかったのですから。
止めた理由はもうお分かりでしょう。怪しまれるだけでもまずいのに、豹真が言っているのは、「僕との闘いを見ていろ」ということなのです。
笑う豹真の前で慌てる僕を、理子さんはじっと見つめましたよね。まるで、豹真とどっちを選ぶか、と問うかのように。