少女の静かな怒り

文字数 506文字

遊んでるんじゃないんです、私も、町内会の人たちも。そんなところでわざとふざけるなんて、小学生男子のすることです。
 本当に、ひとこと多いのには泣きたくなりました。
そこはほれ、男の子やし、大目に見たってくれよ。

 黙っていたのを、代わりに町内会長さんがなだめてくれましたよね。  

 全然フォローになってなかったのですが、僕は素直に感謝しました。心の中で。
 しかし、理子さんはきれいに一礼すると、僕をちらっと眺めるなり、標準語で大人相手にきっぱり言ったものです。

朝早くから、お店やなんかお忙しいのに、ありがとうございます。でも、私の場合は頼まれたのではありませんし、自分で名乗り出たわけでもありません。あくまでも母が申し入れたことです。行事ではありますし、母の立ってのお願いでもありますので、お役目は果たします。でも、それならそれなりのことをしたいと思っておりますので、宜しくお願いします。
……。
……。
……。

 だいたい、こんな感じだったかと思います。

 中学3年生とは思えないほど流暢で、理路整然とした口上でした。
 僕は毅然とした態度の理子さんを呆然と見てましたし、大人たちも返す言葉がなかったのか、唖然としていました。

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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、常に重大な決断を回避しようとする癖がある。

 しかし、追い詰められて発する力は地球の大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、それは自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いによる。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、たとえ年長者でも、直面する問題から逃げることを許さない。物静かだが、時機を捉えれば、やるべきことをやり遂げる。

 ただし、最小限の手間で……。

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