対決の日
文字数 522文字
さて、それから数日、豹真は練習にやってきませんでした。大人たちが何とかつないだアンプからお囃子の音を流しての稽古が続きましたが、毎日のように理子さんは、大人たちを前に言い切りましたね。
地元の言葉で釘を刺されて、大人たちはちょっとの間、沈黙しましたね。
押しの強い提案に、感謝しています。
良識があれば普通はやらないスケジュールで進める練習に文句をつける者はなく、神楽は当日を迎えました。
僕は神主の格好で、鈴の房を手にした理子さんは、金色の冠を戴いた巫女の衣装に身を包み、既にイベントや屋台のテントで一杯になった役場の駐車場の端に設置された、割と地味な祭壇の上で出番を待っていましたね。
日曜の四十万町は花盛りの桜と春祭りの人出で、春の祭典一色でした。
理子さんはそう言いましたが、それこそ、豹真の愛するビバルディの『四季』にある「春」の曲がよく似合うだろうと思われる日だったのです。