男同士で語る、少女のプライバシー

文字数 473文字

いつも聞いてるのをアンプにつないだのさ。

 懐からレコーダーを取り出して自慢げに見せてくれましたが、顔を一瞬で強張らせて、すぐ引っ込めました。

 

(……別にいいと思うんだけど。オーディオ関係に強いのアピールしても)
刀根理子も別にやりたくなさそうだけどな。受験生だし。
 豹真はかなり強引に、話題を理子さんのことに戻しました。
じゃあ何で?
 会ったばかりの年下の相手に罵詈雑言浴びせられて、結構気分を害していた僕です。正直なところ。そこまでムキになる理由を知りたいと思いました。
あそこは代々、しきたりにうるさい婿取りの家でな。母親が仕切ってんのさ。
 それはそれで気の毒ではありましたが、さいぜんの辛辣な発言でチャラ、ということにしました。どのみち新学期が始まれば、もう会うこともありません。

(……問題は、来年、どっちに来るかだ)

(授業料無償の県立有馬高校か……)

(学費がかかってちょっとランキングの低い私立勿来高校か……まあ、低所得世帯には県から補助があるっていうけど)

 止せばいいのに、相手が身内だと分かった気安さで、つい余計なことを言ってしまいました。
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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、常に重大な決断を回避しようとする癖がある。

 しかし、追い詰められて発する力は地球の大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、それは自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いによる。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、たとえ年長者でも、直面する問題から逃げることを許さない。物静かだが、時機を捉えれば、やるべきことをやり遂げる。

 ただし、最小限の手間で……。

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