ささやかな謎解き

文字数 446文字

「事務の方もシャレの分かる人だったようです。

 学校紹介パンフレットにラブレターを仕込んでくれなどという頼みをこっそり聞いてくれたのは、理子さんが旧家の娘で高校の理事の娘だったからでしょう」

……あ。

 少女の手紙を仕込まれた場所に戻す前に、少年にはどうしても書かなくてはならないことがあった。

 再び、便箋の上をペンが走る。

……お節介かな? 豹真じゃないけど。

「さて、手紙を読んで目を疑ったのは、僕たちとは別の力を持つ人たちが、わずか数日とはいえ、すぐ身近にいたということ。

 お母様が厳しい方なのも無理はないと思います。素質を見出せばこそ、事故や間違いが起こらないよう大切になさっているのでしょう。どうぞお母さまと仲良くなさってください」

……ん~。

 ペンを鼻と上唇の間に挟んで考え込む。

 そこでやめておけばいいものを、最後に綴られたのは年長者ぶった説教だった。

……こほん。
「今年は受験の年です。大きなことが言える立場ではありませんが、理子さんの願いが叶うことを、同じ空の下で祈っております。 敬具」
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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、常に重大な決断を回避しようとする癖がある。

 しかし、追い詰められて発する力は地球の大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、それは自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いによる。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、たとえ年長者でも、直面する問題から逃げることを許さない。物静かだが、時機を捉えれば、やるべきことをやり遂げる。

 ただし、最小限の手間で……。

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