面倒な大人づきあい
文字数 459文字
その日の練習は、会場下見も兼ねて、町役場の駐車場に仮設した野外テントで行いましたね。
普通に考えれば、前日にあんな思いをすればもう行きたくなくなるものですが、不思議と抵抗はありませんでした。あのときの気持ちも、理子さんに初めて会った時と同じくらい、言い表す言葉が見つかりません。
ただひとつ、説明ができるとすれば、それは豹真への意地だったでしょう。
いちいち答えるの、面倒じゃありませんでしたか? 理子さんは。
正直、僕の目にはあなたがたいへん不機嫌そうに見えました。
この町から出て、偏差値ランクの高い学校に通って、それからもっと先へ行きたいあなたとしては、たかが田舎町の神楽になどつきあってはいられないはずです。
特に、絶対に上手く言えない僕の祝詞などには。