それぞれの抱えた事情
文字数 471文字
ここへ来る前に父と交わしたそんなやりとりを思い出していると、豹真はまるで心を読んでいるかのような言葉を的確に返してきます。
彼の言う事情は深刻ですが、単純です。
僕が言霊使いの力を隠しきれなかったために、周囲から気味悪がられておかしな噂が立ち、居づらくなったというだけのことです。
それでも豹真は、鼻で笑いました。
その逆もあったといいます。雨乞いをしたり、もっと昔は船が海で嵐に遭わないように祈ったりもしていたようです。
理子さんとの間に入ってくれたことには、彼の素性が分かったところで気づいていました。
そこで僕は聞いてみました。理子さん本人には言えない事だったからです。
僕はなぜ、いきなり祝詞を読まされたのか。
それがずっとモヤモヤしていました。