人と人とのつながり

文字数 477文字

無理は言えんが……。
……。

 その言葉は、僕を引き留めるためとも、また、諦めたためとも取れました。

 ただ、続く言葉には正直、胸が痛みました。

おんなじくらいの年の人は、電話でもインターネットでも、喫茶店でお茶飲んでもつながれる。ほうやけんど、ほれだけやと、ここは住むだけの場所になってまう。こういうことを仲間でやらんと、人は年の差でつながれんのんや。
年の、差で……。

 横のつながりは、たぶん、そんなに難しくはないのでしょう。しょっちゅう引っ越していた僕にはありませんが……。

 でも、同世代だけでは、人は人としてつながれないのです、たぶん。

 しょっちゅう引っ越している僕や父は気楽なものですけど、ひとつの場所に腰を落ち着けようとしたら、もっと年長の人々や若い人たち、はるかに幼い子どもたちとも向き合っていかなくてはならないのでしょう。

あのとき、ワシらも奥さんを支えてやれたら……。
……。
 つぶやきに対して、僕は何も答えられませんでした。豹真の出生も、町内会長さんの自責の念も、僕には重すぎました。
ありがとうございました。
 そう言って、帰るしかなかったのです。
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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、常に重大な決断を回避しようとする癖がある。

 しかし、追い詰められて発する力は地球の大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、それは自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いによる。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、たとえ年長者でも、直面する問題から逃げることを許さない。物静かだが、時機を捉えれば、やるべきことをやり遂げる。

 ただし、最小限の手間で……。

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