方言女子の心遣い

文字数 349文字

 やがて、町内会長さんが汗を拭き拭き戻ってきました。
……ふう。
 僕たちだけが残った公民館の中に座り込んで、それはそれは深い溜息をつきました。それを聞くと、さすがに声をかけるのもためらわれました。

(……やりすぎたかな?)

(……でも、豹真とのケリがつくまでは、ああしないと)

(……何とか、神楽が終わるまでは)

 そこで動いたのは、理子さんでした。
あの、さっきいの要領でええんやったら、見てくれんかな?
 あんなアクセントでは決してOKできないということは、分かっていました。妥協してくれたんですね。今でも本当に感謝しています。
……。

 町内会長さんが苦笑したのを覚えています。たぶん、厳しい理子さんが内心、しぶしぶ譲ってくれたのが分かったんでしょう。

 こうして、その日の練習は、3人だけで再開されたのでした。

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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、常に重大な決断を回避しようとする癖がある。

 しかし、追い詰められて発する力は地球の大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、それは自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いによる。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、たとえ年長者でも、直面する問題から逃げることを許さない。物静かだが、時機を捉えれば、やるべきことをやり遂げる。

 ただし、最小限の手間で……。

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