理子の訪問
文字数 475文字
その夕方のことでしたね。理子さんが僕を訪ねてきたのは。
たぶん、玄関先まで来たところで、家の中が修羅場になっているのはお分かりになったでしょう。僕も、耳の奥で何か聞こえたとは思っていたのですが……。
いつものように僕をまっすぐ見据えた父は、ゆっくりと言いました。いつものような怒声ではありませんでしたが、その分、怒りは肌で分かりました。
豹真と私闘をやらかしたときと同じく、父は定時に退勤してきました。おそらく職場に、町内会長さんからの電話が入ったのでしょう。
僕は再び父と差し向かいで正座し、説教される羽目になったのです。
何でも、町内会長さんは町外の身内を当たってでも代役を探すと言ってきたそうです。しかし、父はそれを断ったのでした。
あれほどダメだと言った父が。
今度は、僕が辞めると食い下がりました。
最初に叱られたときは、生返事で町内会長さんの話を受けてしまったのがいけなかったのです。でも、今度のスタンドプレーは急を要することでした。