樫井豹真の晴れ舞台
文字数 394文字
そこで語り始めた理子さんの笑顔は、まるで別人のもののようでした。照明の蛍光灯をいつ交換したのか分からないほど古ぼけた部屋が、あのときだけふわりと明るくなったようにさえ思えたものです。
結局、あの日は朝から引っ張り出されただけで、ほとんど何もせずに半日が潰れました。気が付くと公民館は昼前の日が差し込んでいたにもかかわらず、また元の薄暗くて辛気臭い場所に戻っていました。
そのとき、僕はさっき見た理子さんの笑顔をぼんやりと思い出していました。