狂気の炎

文字数 468文字

 肌に熱いものが感じられて、ふと身体を見渡せば、うっすらと煙が立っています。

 祭文の意味と豹真の力は、そこで分かりました。

火の立つや、火の立つや、一・二・三・四、炎立つ……。
 何もないところに火を起こす。

 たぶん、そのキーワードは「ほむら」……。

(そうか、豹真も亡くなったお父さんから……。僕が父さんに言霊を鍛えられてきたみたいに)


 そうなると、自分の身体に火が点きかかっていることの恐怖よりも、またそうしている豹真への怒りよりも、むしろ同情や憐れみのほうが強く感じられました。

 しかし、そんなものは豹真に伝わるわけがありません。

使え! お前の言霊! 大火傷するぞ!
やめろ! 言霊使い同士は闘っちゃいけないって、知らないのか?
 きな臭い煙中で僕が叫んだのは、それが僕たちの掟だからです。互いに傷つけあって、共倒れにならないための。
そんなもんがあったかもしれんな。俺はずっと一人でこうしてきたから関係ない!
 軽く笑い飛ばす豹真にはぞっとしましたが、聞かずにはいられませんでした。
言霊使いでない人にまで?

そうさ、バカはいくら傷ついてもいい!


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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、常に重大な決断を回避しようとする癖がある。

 しかし、追い詰められて発する力は地球の大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、それは自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いによる。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、たとえ年長者でも、直面する問題から逃げることを許さない。物静かだが、時機を捉えれば、やるべきことをやり遂げる。

 ただし、最小限の手間で……。

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