苦渋の決断
文字数 424文字
楽しそうな笑い声が返ってきました。心からの笑いだったでしょう。あの甲高く耳障りな声は、今になっても忘れることができません。
豹真は舞い上がっていました。生まれて初めての、言霊使い同士の戦いに。
僕のはもともと黒いジャージなので目立ちませんでしたが、あちこち焦げているようでした。豹真はもはや正気とは思えませんでしたが、それでも僕の頭の中で引っかかっていることがありました。
そう考えて、一つだけ、思い当たったことがありました。
僕の言霊の効果のうち、豹真が見て知っている可能性があるのは、理子さんを前にしたときの、空を覆う暗雲しかありません。
僕の力は、雨風を起こすことではありません。火をつけられても、消せないのです。