特訓が始まる
文字数 355文字
その場の空気を断ち切るように、理子さんは手を叩きました。
今度は僕が面食らいました。歌はあまり得意ではありません。カラオケに行ったことさえないのです。
僕がどぎまぎしていると、理子さんはゆっくりと手拍子を取りながら、理由を説明してくれました。
相変わらず抑揚のない声でしたが、そう言ってもらえたことが嬉しかったのです。でも、変といえば変ですよね、僕のほうが先輩なんですから。
そこで、僕は理子さんの取ったリズムに合わせて歌い始めました。
だんだんと気分が乗ってきて、歌い終わったときに聞こえた小さな拍手で初めて、僕は我に返りました。