僕の誇り

文字数 460文字

恥じてなんかいない。父さんが先祖から受け継いで、人生を懸けて僕に伝えた力だ。僕は誇りに思っている。

だったら……。
間髪入れずに言葉を返すと、豹真は僕をまっすぐに見据えました。
堂々と使うべきだ。優れた者が正しく評価されず、劣ったものが大きな顔をしているのは、間違っている
それが間違いなんだ。

 反論が自然に口をついて出てきたとき、僕は豹真の顔から目をそらしていました。あの歪んだ笑みを思い出すのが嫌だったから、というのもあったでしょう。

 でも、むしろ、考えていたのは理子さんのことです。前日の大雨の中でまっすぐに立ち尽くしていた、理子さんの姿です。

(あんなことだけは、もう二度と……)
言霊使いが、ろくにしゃべれもしない姿を人前にさらすんだ。掟を共にする仲間たちに対して、何とも思わないのか?
 全く気にはなりませんでしたが、無視もできませんでした。

(……思わないわけないだろ)

(……僕たちは、普通の人とは違うんだ)

(……生きていくには、仲間同士で助け合わなくちゃ)

 それは、幼い頃から父に叩きこまれてきたことです。
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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、常に重大な決断を回避しようとする癖がある。

 しかし、追い詰められて発する力は地球の大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、それは自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いによる。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、たとえ年長者でも、直面する問題から逃げることを許さない。物静かだが、時機を捉えれば、やるべきことをやり遂げる。

 ただし、最小限の手間で……。

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