豹真の怒り

文字数 433文字

お前、やる気あるんか! 人がおらんで下手に出とればええ気になってからに! 黙って見とればええ加減なことしくさって、大人を舐めんのもたいがいにせえよ!
……すみません。
 罵詈雑言が飛んできましたが、やりすごせば済むことです。

 勝負どころは、そこではないのですから。

 しかし、僕がやりすごしても、正面から受け止める者がいたら意味がありません。

……。
 ブチっと切れたのは、どうやら横笛の音だけではなかったようです。
……?
……!
うるせえんだよ、ジジイ!
 喚き散らした甲高い声は、豹真のものでした。

 CD操作を投げ出して、僕を怒鳴りつけていた大人に迫ります。

……?
遊んじゃいねえだろ、やってんだろ、『なんじ』って言えねえだけだろ、出来ねえことをやらねえって決めつけてんじゃねえよ、だから家ん中でもカミさんや子供に相手にされなくて、こんなところでブラブラしてんじゃねえの?
(……余計なことを!)

 これには他の大人たちもカチンときたらしく、一人、また一人と豹真を取り囲み始めました。

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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、常に重大な決断を回避しようとする癖がある。

 しかし、追い詰められて発する力は地球の大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、それは自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いによる。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、たとえ年長者でも、直面する問題から逃げることを許さない。物静かだが、時機を捉えれば、やるべきことをやり遂げる。

 ただし、最小限の手間で……。

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